「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
バリス旅行ガイド
歴史の響きと建築の夢:バリス・オアシスの神秘的な魅力
エジプトのアル=カルガから南へ90kmに位置するバリス・オアシスは、豊かな歴史と建築の夢を宿す特別な地です。かつて、ダルブ・アル=アルバイーン交易路の重要な拠点として栄えたこのオアシスは、商人や旅人が行き交い、活気あふれる交易の中心地でした。しかし、時の流れとともに賑やかな喧騒は静寂へと変わり、今では歴史のこだまが優しく響く、穏やかな隠れ家となっています。
穏やかな暮らしと味わい深い食文化
現在のバリス・オアシスは、素朴な生活の魅力を体感できる静寂の地です。風景の中に点在する小さなキオスクでは、エジプトの伝統料理が味わえます。フール(そら豆の煮込み)やタアミーヤ(ファラフェル)は、この地に根付いた食文化の象徴であり、一口ごとに地域の歴史とつながるような感覚を味わえます。
バリス・アル=ゲディーダと建築家ハサン・ファトヒの未完の夢
オアシスの中でも特に目を引くのが、バリス旧市街の北約2kmに位置する「バリス・アル=ゲディーダ」です。このエリアには、エジプトの著名な建築家ハサン・ファトヒが手がけた建築が残されています。彼の設計は、伝統的な建築技法と素材を活かしながら、現代の生活様式にも適応できる新しい集落のモデルを作ることを目的としていました。
しかし、1967年の「六日戦争」の勃発により、このプロジェクトは突如中断されてしまいました。その結果、完成したのはわずか2軒の住宅といくつかの公共建築のみ。それでも、それらの建物はファトヒの未完の夢を物語る象徴的な存在として今も残り、この地域の文化と歴史に深く根ざした建築の可能性を示し続けています。
歴史と建築の融合する隠れた宝石
バリス・オアシスは、歴史の足跡と建築の理想が交差する魅惑的な場所です。そこに広がる静寂の中で、過去の物語がそっと囁かれ、訪れる人々を時の流れを超えた旅へと誘います。この控えめながらも奥深い地を訪れることで、エジプトの広大な風景と悠久の歴史が織りなす、美しくも神秘的な世界に触れることができるでしょう。
作成日: 2020年3月18日
更新日: 2025年3月12日